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名披露目-京鹿子娘道成寺

約 1 分
京鹿子道成寺

名披露目-京鹿子娘道成寺


名披露目の舞台、京鹿子娘道成寺です。
幸運にも大阪の旧新歌舞伎座で踊らせていただきました。

一部の歌舞伎役者さん以外の方が歌舞伎座で道成寺を踊らせて頂く機会など中々ありません。
ましてや名披露目となると本当に希少なことです。この幸運に感謝感謝です。
裏方さんに、どんな良い星の下に生まれたのかと言われても仕方ありませんね。
桜流しの画像

長唄 京鹿子娘道成寺の解説


本名題ー京鹿子娘道成寺
作 詞ー藤本斗文
作 曲ー杵屋弥三郎(初世)
振 付ー中村富十郎(初世)

初演ー宝暦3年(1953)江戸中村座の3月狂言に初代中村富十郎が江戸下がりの初お目見えとして出した所作事

京鹿子娘道成寺の構成


道行から押し戻しまで60分と言う大曲ですが、次から次へと小唄が連続された構成になっています。
変化にとんだ構成で、道行、手踊り、花笠を持っての踊り、所化の踊り、手ぬぐい、羯鼓、振鼓の踊りなど見せ場が続き女形の舞踊の集大成と言える曲です。
今でも舞踊会で最高峰の演目として上演されています。
丸に桜

京鹿子娘道成寺のあらすじ


道成寺縁起を題材にしたものですが、内容はその後日譚という形になっています。
道成寺の鐘供養に、白拍子になって現れた清姫の霊は、伴僧たちを問答で負かして、女人禁制の鐘の供養の庭に入り込みます。
様々な踊りを踊って見せます。伴僧たちは良い気持ちになってい眠りを始めます。

そのすきを狙って、昔安珍が隠れた恨みの鐘に再び狙い寄って、竜頭に手をかけたかと思うと引っ担いで失せます。驚いた僧侶たちは落ちた鐘を囲み丹精凝らして祈ると、白拍子は蛇体の本性を現すといった展開になります。

日本舞踊の会では、道行や伴僧たちとの問答を省いて、踊るところから始まり、鐘に上がり祈られるところで終わるのが一般的です。
歌舞伎では、道行、伴僧たちとの問答、後は押し戻しまでが普通となります。華やかで豪華な舞台です。
日本舞踊でも、家元様やそれに等しいお師匠さま方は歌舞伎の形式をそのまま踊られる場合もあります。
釣鐘と桜

道成寺縁起のあらすじ


安珍清姫伝説の由来です。
昔、紀州に真砂の庄司というものに一人の娘(清姫)がいました。そこへ奥州から熊野詣をする山伏(安珍)が毎年宿にしていました。
幼い清姫に安珍は大きくなったらお嫁さんにしてあげるなどと冗談を言っていました。
そして、清姫は大きくなるにつれて、一緒に奥州に連れて行ってくださいと迫りました。

安珍は驚いて、その夜のうちに宿を逃れて、日高の寺(道成寺)に駆け込み助けを求めました。そして、撞鐘をおろしてもらって隠れました。
そこへ、清姫が追いかけてきます。折からの日高川の水かさが増して渡りにくいのも関わらず、一念の毒蛇となって泳ぎ渡ります。
寺中へ訪ねて行き鐘の降りているのを怪しみ、竜頭を加えて七まとい尻尾で叩くと鐘はたちまち湯となって山伏も消えたしまう。

いろいろな説がありますが、あらすじとしては上記が広く知られています。
また、毒蛇となったとありますが清姫の黒髪が日高川の川面になびいてそのように見えたという説もあります。
いずれにしても、無垢な少女の心を惑わすようなことを言ってはいけませんね。
桜と清姫

長唄ー京鹿子娘道成寺の見どころ


なんといっても、豪華絢爛な舞台と衣装です。

花の外には松ばかり 花の外には松ばかり
暮れ染めて鐘や響くらん

という歌詞で始まるように、桜と松が遠山に描かれている背景です。
後ろに並ぶ地方さんたちも、桜の模様の裃を付けています。景色の一部ということになります。
全十四段に分かれていますが、花柳流では2段から踊ります。第九、十二、十三、十四段は省略となっています。

第一段は、道行と言われている部分です。道成寺につくまでの踊りになっていますので花道で踊ります。黒地にしだれ桜の衣装付けです。
それでは、格段の衣装や小道具を見ていきましょう~。
*写真が少し色あせていますので、色の出具合が悪いのですがご了承ください。

第二~四段


緋縮緬枝垂れ桜の縫取模様の衣装付けで、烏帽子をつけて始まります。
白拍子の心を忘れず品位をもって踊ります。緞帳が上がると緊張する瞬間です。
この後、唄が変わるたびに衣装の色や模様が変わります。それと同時に差し物(かんざし)の色も変わります。
紅白の花簪
緋縮緬の枝垂桜縫取模様の衣装

毬唄ー第五段


舞台の上で、踊りながら衣装が変わります。玉貫といわれる手法が使われています。
赤の衣装から、浅黄(水色)縮緬枝垂桜模様の縫取り衣装に一瞬にして変わります。
お袖で、花弁を集めて手毬をつくり、それをつきながら廓の様子と鐘をかけて唄った歌詞で踊ります。
☆見どころは、膝づめという手法で座ったままで両膝を上げて、手毬をついた振りをして舞台の上を一回りします。
浅黄縮緬枝垂桜模様の縫取

振り出し笠ー第六段


第五段の終わりに、いったん舞台のそでに入り、着替えます。
両方の袖を脱いで、その上からととき色(ピンク色)ちりめん枝垂桜模様のかぶせ襦袢を差し込みます。
笠をかぶり、振出傘をもって舞台中央に出て、踊り始めます。
振り出し笠
☆見どころは、手持ちの笠を三段に振り出すところです。
三段笠がかわいいですね。日本人形にも使われている形です。
白拍子花子が踊っている間に、所化の方たちが踊りの準備をして出てきます。
三段振り出し笠
梅とさんさん桜はと、傘をもって所化たちも踊ります。
人数は部隊の大きさによっても変わってきます。所化の人数が多ければ華やかです。
私の場合は歌舞伎座ということもあり、12人の所化を出しました。
所化たちが踊っている間に、花子は舞台のそでで着替えます。
所化の踊り

恋の手習いー第七弾


藤色縮緬枝垂桜模様の衣装に着替えて登場します。とき色の花簪
紋の入った絹の手拭いで踊ります。くどきともいわれる部分でしっとりと踊ります。

娘心を現した歌詞は、花子(清姫)の心境も表していると思います。
*手ぬぐいの紋は、華やぎの定紋と私の家の紋を染めています。
恋の手習1
私が好きな振りの写真がありましたので乗せさせていただきます。
手拭いを鏡に見立てて、自分の姿を映している振りになっています。

誰に見せうとて、紅(口紅)かね(かんざし)つけよぞ
みんな主への心中だてと唄が続きます。

この手ぬぐいの口説きが終わったら、手ぬぐいまきになります。花子が4本ほど会場にまきます。
そのあと、所化が出てきてたくさん手拭いをまくのです。
名披露目の時にこの曲が選ばれる理由もそこにあります。
恋の手習2

羯鼓ー第八段


通称山尽くしの段といいます。山にまつわる歌詞からなっています。
衣装は、白地、または卵色時に火炎太鼓に幔幕、紅葉ちらしの地盤を差し込みます。銀三段の花簪
私は白地を着ました。
羯鼓ー火炎太鼓に幔幕

鈴太鼓ー第十段


火炎太鼓の衣装を引き抜いて、赤字枝垂桜模様縫い取り襦袢に引き抜きます。
この踊りになるとクライマックスになります。
鈴太鼓

鐘に上がるー第十一段


だんだんと本性を現して、釣鐘がおろされます。
その周りをまわって、鐘の後ろにまわり、鐘に上って終わりになります。
所化も驚いて、鐘に上るのを引き留めようとします。

衣装は赤のままの場合もありますが、白地に銀のうろこの拍置きの衣装になる場合もあります。
私の場合は後者の拍置きに変えています。これで、幕となります。
道成寺最後の決まり

エピソード


道成寺の衣装に限らず、日本舞踊の衣装や鬘(カツラ)はかなりの重みがあります。
特に、引き抜きの場合は2枚重ねていることになりますのでかなりの重みがあります。
歌舞伎舞踊は、男性の方が演じられているので体力的にも女性が踊るにはかなりの負担になります。

下合わせ(リハーサル)の時は、そうも感じませんでしたが本番は下ろしたての新しい衣装で張りもありとても重たく感じました。
舞台の上に立って、思わずお師匠さんに「重たくて踊れませんと」訴えたのですが、聞こえなかったのかそのまま舞台のそでに入られました。

そして、ドーンドーンと鳴り物が入り、緞帳が上がりました(汗)
もう踊るしかありません。かなりの練習をしていましたので音がなると体は自然に動きなんとか踊り始めることができてよかったです。
桜とまり
毬唄で衣装を引き抜くのですが、その時とても素敵な笑顔だったとお友達に褒めてもらいました。
それはきっと、衣装が引き抜かれた瞬間、裸になったのかと思うぐらい軽くなったので思わず笑顔になったのだと思います。
いいほうに思われてよかったです(笑)

かつらもかなり重みがあります。時代物と言って古典の本衣装で踊るときには、顔にあたる部分が網ではなくカネになっています。
しっかりとしていますので、跡形がのこるのですが道成寺のときは一週間もくっきりと残っていました。
ちょっとおさるさんのようでした。




最後までお読みくださいましてありがとうございます。
初心者の方の手引きになれば幸いです。
さくらと鐘

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